残された時間

愕然とした。仕事から帰ってきたら、ナナちゃんはフラフラしている。あれ、こんなに足が細かったんだっけか……あれ、ちゃんと立てていないじゃないか。どうしたんだろう。さっき大量に吐いた。朝、頑張って食べたカリカリか……そのあとも胃液を何度も吐いている。明日、医者へ連れて行った方がいいんだろうか。寒空に外に出したくない気持ちもある。でもただごとじゃないかもしれない様子。明日、病院に電話して相談してみよう。
そっか、、、ナナちゃんに残された時間はもしかしたらそんなにないのかもしれない。一過性で調子悪いだけならいいけど、何かが違う。この間の点滴の跡があまりにも痛々しい。点滴なんかするんじゃなかった。ナナちゃんの体を傷つけるんじゃなかった。
日々を穏やかに、幸せにと願っても、どうやったらナナちゃんにそんな時間をあげられるんだろう。どういう時間をナナちゃんは望んでるんだろう。何だかワケがわからないよ。
わかってる。ボクみたいに猫を失って何ヶ月も立ち直れない人間は、何をしても、何をしなくても、絶対に後悔する。だけど、どんな時間を過ごせば、一番後悔せずに済むんだろう。そんな問いに答がないのもわかってる。
朝、起きてナナちゃんが小さな声で『ゴハン……』ってなく。その後は日がな一日こたつの中で寝たり……ボクが仕事から帰ったら、ヨボヨボと近寄ってきて甘えてくれる。そんな一日でいいのに。それだけでいいのに。あとどれくらいそんな日々を過ごせるんだろう。