七夕の夜空に。

いっぱいの願いが書かれた短冊で覆われた笹。七夕飾りの中の無数の願いごとたち。全部が全部は無理でも、少しでも多くの願いが叶うといいね。そうしたら、きっとこの町も笑顔であふれかえるだろうに。
僕は短冊こそ書かないけれど、今年は何を願おうか。やっぱり、ここはあれだよな。





ねぇ せめて夢で会いたいと願う 夜に限って いちども出てきてはくれないね





ひと頃、僕はこの歌をケータイの着メロにしていて、マナーモードにし忘れたいくつかの場面で笑われたことがあったっけか。おっさんにはさぞかし似つかわしくなかったんだろう。うん、当たり前。
僕のもとから旅立っていったあいつらは夢にさえ出てこない。出てきているのかもしれないけれど、僕は一切記憶にない。もし僕が熟睡しているのなら、叩き起こしてくれたらいいのに。頼むから、一度でいいから、夢の中で抱くことができたら。
そうやって、力一杯抱きしめたいのに、現実の世界では抱きしめられない。きっと、これからもそんなことが増えていくんだろう。そんな切なくさせるやつらに会えたことが幸せなのか、そんな切なさを知らない方が幸せなのか。
きっと会えてよかったんだろうけど、どうにもきついよ、きつくて悲しい。


一番星に祈る それが私のくせになり 夕暮れに見上げる空 心いっぱいあなた探す





東京でもいくつかの星は大きく輝いて見える。その中を光の明滅と共に消えていく飛行機たち。流れ星でもないのに、僕は精一杯の願いごとをする。