遠い風景

子供の頃に住んでいたのはいわゆる長屋。それでも3坪ほどの庭と、そして玄関前にも1坪ほどの庭があった。そこにはフキやセリ、それにゆすらご、バラや柿が季節ごとにボクの目を楽しませてくれた。物心付く前はブドウや藤もあったのだそうだ。向かいの家にはザクロとイチジク、隣の家にはとうもろこしとひまわり……自然を感じる素材には事欠かなかった時代だった。それが今は素材がどんどんなくなって、風や葉っぱの匂い、日差しの中に季節を感じるしかなくなってしまった。緑すらないコンクリート群の中にあっては、道の裂け目から顔を出す雑草や太陽の照り返しの中にしか季節を見いだせなかったりする。それでも季節を感じられるだけましなのかもしれない。今日は日比谷公園の日差しの中で、何故かそんな遠い昔を思い出してしまった。ウォークマンで聴いていた音楽のせいかもしれない。今日は日だまりの猫の写真を2葉。今日、帰ったら、ナナちゃんは元気に迎えてくれるだろうか。